映画:フード・インク



 多分この映画見た後はしばらくはハンバーガーとか食べたくなくなるんだろうな。そう思って見る前に、ハンバーガーとポテトを食べて腹ごしらえをしてから鑑賞しました。というわけで、フード・インクを見てきました。



●ストーリー(ネタバレあり)
 スーパーに行けば旬に関係なくいろんな季節の食材が手に入る。数百、数千種類もの食品、その多くはコーン、大豆、牛肉、豚肉、挽肉、ミルクと言った数十の原料から出来ている。それをいかに効率的に作るか。それが現在の“工業フードシステム”。ラベルにはのどかな牧場に絵が描かれたパッケージに入っているバター。しかしそんな光景は数十年前の光景。現実とは遥か異なる光景だ。
 アメリカでは鶏肉のメーカーは数社。その一社と契約している養鶏場を訪ねるが、どこも取材は拒否される。ようやく取材に応じてくれた養鶏主から話を聞く。養鶏場のシステムや育て方はそのメーカーから指示される。そうすることでどこの養鶏場の鶏肉も同じ品質で、かつ効率的に育てられるからだ。その方法はかつての方法よりも半分の時間で2倍の体重の養鶏を育てることが出来る。引き出しのようなところに押し込められたひよこたち、それが育つと運動できずに2倍の体重になるわけだから、たって2,3歩あるくと足は体重を支えられなくて折れてしまう。明るくなると動き出してしまうため、鶏たちは日を見る事はない。
 メーカーは養鶏場に次ぐ次に新しい装置を買わせ、養鶏主のところにはお金は入らない仕組みになっている。そしてメーカーの言う事を聞かなければ即刻契約を打ち切られる。この養鶏主も新しい装置の導入を断ったばかりに契約を打ち切られた。そのため取材にも応じてくれたのだ。
 巨大農場に押し込められた牛たちが口にするのはコーンなどの穀物。通常牛たちは牧草を食べて育つのに、本来食べないコーンを無理矢理食べさせられる。当然消化できないから牛たちは戻してしまう。そこで胃に穴を開けて消化させるための薬を押し込んだり、消化できないものを取り出したりして育つ。そんな状態だから衛生に育つわけもなく、O-157などの大腸菌に感染してしまう。
 つい先日まで元気だった2歳の男の子・ケヴィンが死んでしまう。死因は汚染された肉で作られたハンバーガー。まさかハンバーガーを食べて数日後に死ぬなんてと悲しむ母親。先日の日本であった生肉の食中毒事件ではなく、加熱したハンバーグなのに。当時の農務相長官は牛肉業界出身。元全米食品加工協会の副会長は、食品医薬局(FDA)の局長をしていた。生産・加工側をチェックするはずの農務省やFDAが生産・加工出身なのだ。これではチェック機構がうまく働くはずがない。実際、当時の法律ではFDAも農務省も工場の操業を停止させる権利はなく、汚染された食品はその後も市場に出ていたのだ。
 その後、精肉加工業者は画期的な方法を開発する。牛肉をアンモニアで消毒するのだ。この方法はデファクトスタンダード(業界標準)になり、さらに儲かるようになる。鶏肉もミンチを作る際には、内臓や骨が混入する事がある。このため同じようにアンモニアで消毒し、その臭いを取るために酢酸で中和する。内臓や血の赤色を隠すために漂白剤を入れる。肉を食べているのか薬品を食べているのかわからない。
 ケヴィンの母親は、食品安全基準の強化と、政府が工場の操業を停止させる権利をもつケヴィン法の成立を目指し働きかけていた。
 車に親子4人が乗っている。父親も母親も子どもも太っている。彼らはファーストフードのドライブスルーに行く。ハンバーガー1つが1ドル。さらに彼らはスーパーマーケットに向かう。ファーストフードではなく野菜をもっと摂らせたいという親だが、ブロッコリーが1ドル29セント。ハンバーガーより高いのだ。子どもが来れ食べたいとフルーツを持ってくるが、もっと安いものにしなさいとお菓子コーナーに連れて行く。低所得者は野菜を摂らなければとわかっているけれど安いファーストフードに行ってしまう。その結果、糖尿病に。その薬は1錠でハンバーガーを2使っておつりが来る値段。親だけでなく子どもも糖尿病予備軍。すでにアメリカの子どもは3人に1人は糖尿病予備軍と言われている。
 加工食品も飼料も大豆とコーン。その多くは生産効率と害虫に強いように改造された遺伝子組み換え作物だ。しかもアメリカではその表示義務はない。遺伝子組み換え作物を作ったメーカーはそれで特許を取得した。つまりメーカーから買った遺伝子組み換え作物の種を増やせば特許侵害となる。つまり農家は借り入れた作物を使って作付けをする事が出来ないのだ。作付けをする時は再びメーカーから種を買わなければならない。農家の収入はこうしたメーカーやガソリン代、農薬代へと消えていく。
 精肉業界も農業も今や巨大なフード工業システムが作られ、国民の健康よりも数社の利益のために動いているのだ。


> 「食の安全のために私たちができること」
>
> 労働者や動物に優しい、環境を大事にする企業から買う
> スーパーに行ったら旬のものを買う
> 有機食品を買う
> ラベルを読んで成分を知る
> 地産食品を買う
> 農家の直販で買う
> 家庭菜園を楽しむ(たとえ小さくても)
> 家族みんなで料理を作り、家族そろって食べる
> 直販店でフードスタンプが使えるか確かめる
> 健康な給食を教育委員会に要求する
> 食品安全基準の強化とケヴィン法を議会に求める
>
> システムを変えるチャンスが1日に3回ある
> 世界は変えられる ひと口ずつ
> 変革を心から求めよう

引用部分はフード・インク パンフレットより。



●感想、思ったこと(ネタバレあり)
 ドキュメンタリー映画です。このブログでもいくつかドキュメンタリー映画を紹介していますが、ドキュメンタリーとドキュメンタリー映画とは違うと思うんです。どんな伝えたい事があっても映画である以上、見てくれなくては意味がない。つまらなければお金を払って観に来る人はいない。つまりエンターテイメント性があってこそのドキュメンタリー映画です。
 そう言う意味では、アメリカの保険制度を描いたシッコはエンターテイメント性がありすぎるくらいありすぎます。逆にありすぎて引いてしまうくらい。
 逆にゴールデンゲートブリッジからの自殺を追ったブリッジは、エンターテイメント性がなく、淡々としてはっきり言って眠くなる作品でした。
 バランスが良かったのが、地球温暖化を訴える不都合な真実は始終鳥肌が立つほどの力がこもっていて見る人を引き込みます。捨てられた動物たちとそれに関わる人間とを描いた犬と猫と人間とは涙と怒りがこみ上げてくる作品でした。
 で、本作ですが、正直言うと大半知っていた内容だというのもあるんでしょうが、エンターテイメント性がなく、説教臭い印象を受けました。ケヴィンくんには悪いけどね。
 そして健康をないがしろにした効率化と一部の金儲けのシステムは変えていかないとと言うのはわかっても、これから訪れることが懸念されるであろう食糧危機に対処するためにはある程度の工業システム化は仕方が無いんじゃないかと思います。一方で、日本は世界有数の食糧輸入国でありながら世界1位の食料廃棄国でもあります。その辺も含めて改善していかなければ、1食、1膳のご飯と、具なしの味噌汁とおしんこという時代がホントにきてしまうかもしれませんね。
 本作では触れていませんでしたが、バイオエタノールの問題もあります。本作でも出てきたモンサントという穀物種子のメーカーはバイオエタノールが流行ればさらに儲かる事になります。アメリカは地球温暖化よりもモンサントをはじめとするメーカーを儲けさせるためバイオエタノール政策を打ち出しているのではないかと思うほどです。日本のバイオエタノール研究は、不要となった木くずや収穫の終わったイネなど、あるいは繁殖増殖の簡単な藻類からバイオ燃料をつくる研究をしているのに、アメリカは食料でもあるコーンをメインに作っているんです。
 そしてこのモンサントは世界的にも除草剤でも有名なメーカーだったんですが、その特許による独占権が切れてからは中国などの後発品が出て大打撃を受けたんです。その立て直しの懇親の製品がその除草剤でも枯れない遺伝子組み換え作物なわけです。もちろん安全性試験は簡単にしかやっていません。そして本当に安全なのかという民衆の声が大きくなってきたため、食品以外の利用法が必要になってきたわけです。それがバイオエタノールです。
 国民不在の政治があるのはアメリカも日本も一緒なんですね。

 で、せっかくこの時期にこの記事を載せるのですから、ユッケ事件のこともふれなければならないですかね。生食用でないことを知りながら出していて、しかも今は検査すらしていない。これは事故ではなく完全に事件ですよね。今まで検査でひっかかった事がないから検査をやめたってどういう理由だよ。自分の金儲けのために人を殺すなんて。業務上過失致死ではなく、殺人だよね。






観て良かった度:●●●○○ 3点 最低1点、最高5点






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