映画:その街のこども 劇場版



 1/17にあれから17年を迎えた。あれとは、そう1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災。そんな震災を経験した2人が主演するその街のこども 劇場版を見てきました。


●ストーリー(ネタバレあり)
 2010年1月16日夕刻。東京の建設会社の設計部門で働く勇治(森山未來)は先輩社員(津田寛治)と一緒にクライアントのいる広島まで出張する最中だった。
 途中、三ノ宮駅に列車がさしかかると二人は降りようとした女性に目を奪われる。後ろ姿しか見えなかったが、すごいプロポーションの持ち主。先輩は絶対いい女だよなぁ~とつぶやく。すると勇治は荷物を持って列車から降りだしてしまう。彼女に惹かれたからではなく、勇治は子どもの頃にこの辺に住んでいたことがあり1995年1月17日午前5時46分に起きた阪神・淡路大震災から明日で15年で自分の故郷が気になっていたからだ。
 ホームに降りた勇治に先輩から連絡が入った。「急になにやってんだよ!」「彼女の写メを撮るか、携帯の番号を聞かないと許さない!」と先輩からむちゃな指令が舞い込んでくる。勇治はエスカレーターで彼女の写メを撮ろうとするが、気がつかれずなかなか撮れないでいた。そんな時、彼女が勇治に話しかけてきたのだ。「怒られる!」と思った勇治だが、道を聞かれただけだった。
 彼女の名前は美夏(佐藤江梨子)。二人とも神戸出身であることを知った2人は一緒に食事に行くことになる。
 そこで2人は子どもの頃に震災を経験し、その後東京に出てきたという同じような経験を持っている事を知って話がはずむ。勇治は「携帯番号かスリーサイズを教えてください。」と切り出すと美夏は「090…。」と教え、ますますいい雰囲気に。
 ところが美夏は、あの食べ物がなかなか手に入らないときに、支援という名目の元、普通の値段の何倍もの値段で県外から食べ物を売りに来ていた人たちを人間の風上にも置けないと批判した。それに対して勇治は需要と供給のバランスなのだから普通のことだ。むしろ賢い生き方だと言う。この話題で2人の間に入った亀裂。美夏はお金を置いてお店を飛び出してしまう。
 勇治も気分を害すが、2人の荷物を一緒にコインロッカーに入れていたことを思い出す。とっさにさっき教えてもらった携帯電話にかけるが、電話はつながらない。勇治はしかたなくコインロッカーの前で美夏が戻ってくるのを待つ。
 美夏が戻ってきたのはもう遅い時間。美夏は実家の御影山手に行きたがったが、すでに終電はない。近くのホテルに泊まろうという勇治だったが、どうしても実家に帰りたいという。仕方なく美夏は歩いて向かうことに。成り行きに勇治もつきあう。
 二人は線路脇を歩き出すが途中春日野道でたこ焼きを買う。暖まった二人は自分の身の上話をしながら歩き出す。。。
 美夏は毎年震災のあったあの日あの時間に三宮の東遊園地で行われる“追悼のつどい”に参加するために来たのだという。15年間心の整理がつかなかった彼女は初めて参加を決意したのだ。と言うのも、震災で仲のよかった友達を失ってしまった。その子の家に行くと、その子のお父さんも自分を暖かく迎えてくれた。挨拶に行けば泣いてしまう。その子が死んで自分が生きていることがつらくなる。だからあれ以来挨拶にも行っていないという。
 そうこうしているうちに御影山手の美夏の実家にたどり着いた。荷物を置いた美夏と勇治は再び三宮の東遊園地へと向かう。途中、美夏が子どもの頃に遊んだという公園に立ち寄る。その友達とよく遊んだ公園だ。美夏はその公園を聖地と呼んでいた。
 途中、六甲道では勇治がよく野球をやったという公園にさしかかる。ところが美夏が動揺し始める。その友達の家がすぐそこにあったのだ。そしてその友達の家には灯りがまだついていた。友達のお父さんはまだ起きているのだ。勇治は美夏を励まし、挨拶に行くように言う。「無理。」と動揺する美夏だったが、意を決してマンションに向かう。
 しばらくして美夏が戻ってくると美夏は涙を流していた。お父さんは、長年挨拶に来なかったこと、15年ぶりに元気な顔を見せてくれたこと…。「ありがとう。って言ってくれた。」と言う。美夏がマンションから出た後もお父さんは美夏に手を振って見送ってくれていた。でも美夏は「こんな姿、おじさんに見せられないよ。」と泣き続ける。勇治の励まして、美夏は振り向いておじさんに手を振って応えた。
 2人は再び歩き出す。西灘では勇治の友達の家の前を通る。家の前には子供のおもちゃがあり、子供が産まれて暖かい家族を築いていることを知る。そんな彼とも子どもの頃にケンカをしてそれ以来連絡も取っていない。勇治の家は屋根の修理業をやっていた。震災の影響で修理の依頼がたくさん入った。しかし資材は不足して入らない。入っても今までよりも値段が高い。なんとか今までと同じ値段でやりたかったものの、自分の家も被害にあってすべてが思うようにいかない。そんな中、仲間の業者は値段をつり上げ始めた。中には震災前の10倍以上の値段をふっかける業者も現れた。勇治の父親も値段を上げざるを得なかった。この家も、勇治の友達の家と知っていながら、震災前の何倍もの値段で修理した家だった。それが原因で疎遠になってしまったのだ。勇治は多くの友達と縁をることになり、つらい思い出が多いこの街が嫌いだったのだ。美夏は、通常より高く物を売る人を擁護したのは、勇治にそんな思いがあったことを知る。
 そんなこともあり、今回のクライアントの高層ビルは地震にも強いビルを売りにしていた。2階フロアに大きなテラスを設けることで上からガラスやものが落ちてきても1階から避難する人の上に落ちないようにしようとしていたのだ。しかしクライアントの値段交渉でこのテラスは撤去されることになった。震災を経験した勇治にとってこのテラスは人の命を守るためになくてはならないものだったのに。
 勇治は美夏に言う。「震度6に耐えられるビルというのは震度7が来たら崩れるって言う意味だよ。震度6に耐えられるというビルが震度7にも耐えられたら無駄にコストをかけたと言うことになる。それは悪い設計と言われる。僕らはそう言う仕事をしているんだ。」と。
 次第に東の空が明るくなり始めた。勇治も心に傷を負っていたことを知った美夏はに一緒に東遊園地で“追悼のつどい”に参加しようという。しかし勇治は参加する気にはなれないと言い、東遊園地の前で2人は反対方向に歩き出す。



●感想、思ったこと(ネタバレあり)
 ちょうど17年目の1月17日に鑑賞です。つまりこの記事を書くのに2ヶ月も放置したままでした(汗)。
 大学生だった当時、朝テレビをつけて「朝から映画やってんのかぁ。」と思ってチャンネルを変えてみたものの同じような映像。寝ぼけながら「?」と目をこすると「Live」と表示されていた。眠気は一発で覚めてそれが現実の出来事なのを知りました。
 でもその2ヶ月後起きた地下鉄サリン事件。大都市での民間人を標的とした毒ガステロ事件というのは世界初めてと言うことで日本だけでなく、世界を震撼させた出来事。関西がまだガレキ処理など復興に向けて戦っていた頃、正直関東ではすっかり忘れ、テロにおびえていたのを思い出します。
 映画に関して言えば、実際に震災を経験した2人が自分たちの体験を盛り込んで作ったこの作品。とても感動的な作品でした。友人を本当に失った美夏と、友人を絶交という形で失った勇治。安全なビルを建てたくて就職した建設会社だが、実際には安全よりもコストを優先させなければならない現実。震災の傷を受け入れられた美夏と、まだ受け入れられない勇治との対比。演出がにくい。勇治も“追悼のつどい”に参加するのかと思っていたが、最後は別々に歩み出す2人の対比がより感動を誘います。良い映画でした。

 ところで、気になったのが、耐震震度6の建物は震度7の地震が来たら崩れる設計になっているというところ。原子力発電所は当初40年で廃炉にする計画だったが、特別に最長20年延長できることが奇しくも阪神・淡路大震災から17年となる、この映画を見た2012年1月17日に決まった。もともと40年持つ施設を、商業を目的とする電力会社が作ったのだからコストを削減して建てた可能性も高い。果たして当初の寿命の1.5倍となる60年も本当に持つのだろうか。事故を起こした福島第一原発は40年目だったのだ。
 津波や原発事故のなかった阪神・淡路大震災ですら、人々から物理的あるいは人の心から奪ったものは大きいのに、東日本大震災では地震の被害の他に津波、そして原発事故と三重苦。とくに原発事故に関しては1年以上だっても目処が立つどころか、今も被害を拡大しようとしている政府と電力会社。この映画で感動と一緒に更なる恐怖を覚えました。




観て良かった度:●●●●○ 4点 最低1点、最高5点










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